車から毛布を出して羽織った。パジャマ姿に傘と引きちぎられたバッグ。惨めだったがもう引き下がれない。
警官たちの会議は続いた。このパジャマ女にたったひと言を言わせていいのかどうか。また暴れ出すのではないか。
私の見張り役の警官は、家に帰ったらあなたはますます危険に晒されるのではないかと言った。だから何だと言うのか。子どもが待っている。私はあの家に帰るしかないのだ。
どれぐらい待ったのか。とうとう私はチャンスをもらった。(練習までさせられた)
ガードレールの向こう側にはあの男と警官が1人。こちらは10人ほどの警官に囲まれていた。
「今月中に家を出て行って欲しい」。棒読みのその言葉にあの男は驚き、言葉の意味を理解したのか固まっていた。
もうどうでも良かった。このあと陰惨な事件が起きたとしても、これだけの証人がいる。お得意のセリフ「そんなの聞いてない」とは言わせない。
私はタクシーで帰らされた。