「貯金ができなかったのはお前のせいだ」と言われ、耳を疑った。スマホをまじまじと見つめた。あの男の名前が表示されていた。
貯金などできるわけがない。カードの支払いに追われていたのだ。
日々の生活に足りない分は私の貯金で補った。夫婦なのだからしょうがない、と本気で思っていた。いつか分かってくれるだろうと信じていたから、そんなふうに思っていられたのだ。
保険や税金の支払いでまとまったお金が必要になる時がピンチだった。泣く泣く子どもたちのお金を借りた。絶対に返さなくてはいけないお金だ。
だが父親であるあの男には、事の重大性が伝わらない。いや、わかっていたはずだ。彼は辛い現実から目を逸らしていただけだ。
カードを使い続ける男には借金をしている意識はなく、都合の悪いことは全て私のせいにするようになった。かつて母親に向けたやり口なのだろう。しかし私はそんなことには屈しない。反撃の時を待つようになった。