あまりにも酷すぎたのか、それとも酷いことが多すぎたせいか、妙な記憶違いが発覚したことがあった。
〈私の記憶〉何がきっかけだったのか夜中にあの男が怒り出した。そこへ寝ぼけて起きて来た小学生の娘。娘に向かってあり得ない暴言を吐く男。私はカッとなったが、寝ぼけた娘がそのまま寝てしまえば朝には忘れているのではないか、あれは夢の中の出来事だったと思うのではないか。そう思って娘をベッドに戻した。
〈娘の記憶〉私たち3人はリビングにいた。娘は中学生ぐらいか。何かのきっかけであの男は怒り出し、娘に向かってあり得ない暴言を吐いた。それを聞いて私は何か叫びながら男につかみかかったらしい。私の性格なら十分あり得る。
この話を聞いて断片的に思い出した。おそらくこっちが真実なのだろう。でも私には「寝ぼけたまま夢の中の出来事にしてほしい」と娘を寝室に連れて行った記憶もある。酷すぎて封じ込めた出来事がまだありそうだ。