我慢 92/1000
あの男の身勝手な言動に負けたくなかった。
世の中には私よりももっと苦しんでる人がいる。戦争、暴力、飢餓、貧困。なぜこの国に生まれたのか、と疑問を持つこともなく死にゆく人もいる。
そんな人たちに比べたら、今の私はなんと恵まれたことか。命を奪われる恐怖に比べたら、私の辛さなど枯れ葉一枚の重みもない。
でも私は苦しかった。誰かに知ってもらいたかった。
いやいや、それは贅沢だ。
でも辛い。生きることが苦しい。
戦争で命を落とす人の前でそんなことを言えるのか。
わかってる。でも苦しい。なぜこんなに苦しいの?
甘えた考え方をしてるからだ。
私は甘えてるの?我慢が足りないの?
小さな頃から母親に言われただろう。
そうだ、私は我慢が足りない子だった。私が我慢をすればいいんだ。
こうやって苦しいことを胸の奥にしまいこんで、私は元気で、明るくいようとした。長く生きていればいろいろあるよね、と思うようにした。