ミレー「馬鈴薯植え」
絵が上手いね、上手いでしょう、と言われるのが苦痛だ。絵を描くことは嫌いだ。
子どもの頃は得意で、学校の推薦でコンクールへ出品し、そこそこの賞をもらうこともよくあった。絵を描くことは私にとって日常で、ごく自然な行為だった。
この展覧会が大きな転機となった。
わずか10歳の私はミレーの作品に震えるほど感動し、「こんな絵は私には描けない」と自分を恥じた。
以来、絵筆を持つことが苦痛になった。12歳の時にクラスの前で駄作を発表させられるという屈辱を味わい、真面目に絵を描かなくなった。
何かを表現したい気持ちを抱えながら、その方法を捨ててしまった。絵が好きなのに…好きなのに…手が動かなくなってしまった。描きたいと思った時には、描き方を忘れてしまっていた。
今思えば、頭の固い自分が先回りして作り上げた現実。人生をやり直すなら10歳からだ。かくして卑屈なアート好きが誕生したのだ。