車で信号待ちをしていた時、反対側の歩道を行く車椅子の男性を眺めていた。
比較的ガタイが良いのに、ほんの少しのスロープを上れず苦労している。車椅子とはなんと不便なものなのか。
チラッと見ながら行き交う周囲の人々。
私はイライラしていた。ほんのひと押しするだけなのだ。このまま車から飛び出していきたかった。
ついに若い女性が「ほんのひと押し」をして事なきを得た。私は車の中から拍手喝采を贈った。
数週間前に両膝から血を流している若い女の子を見かけた。不憫に思い声を掛けた。
絆創膏買ってこようか?
いえ、大丈夫です。
思いの外ハキハキと答えるが、真っ白な肌に鮮血が生々しく痛々しい。何度言っても大丈夫と答える彼女に、あろうことか私は仕事を優先して立ち去ってしまった。10分や15分遅れたからと言って大した遅刻にはならなかったはずだ。直後から激しく後悔した。その時の私はチラッと見て立ち去る人だったのだ。